俺様副社長は愛しの秘書を独占したい

 でもそうだ、日本ではこういうことが日常茶飯事だった。友達が欲しいと願いながら、女子特有の思考に私はついていけなくて、ひとりでいるほうが楽になり、いつの間にかそれに慣れてしまったから。

「木名瀬さんの臆することなく堂々としているところには、悔しいけれど好感が持てる。でもあまり周りに無頓着だと、仕事に支障をきたすわよ? 気をつけることね」

 忠告すると細川さんは立ち上がり、「お先に」と言うと秘書課から出ていった。
 気をつけるように言われても、どうしたらいいのだろうか。

 私も席を立ち、副社長室へと向かう。

 今のところ仕事に支障をきたすようなことはないけれど、でも本当に細川さんが言っていたような噂が流れているとしたら、それは困る。一秘書でしかない私が変に目立ちたくないし、なにより副社長に迷惑をかけることにもなりかねない。

 しかしどうやって手を打てばいいのやら……。ここは源君を食事にでも誘って、直接事の真相を聞くべきだろうか。

 副社長室に着いたものの、朝一で行なわれている重役会議がまだ終わっていないようで、彼の姿はない。

 きっと疲れて戻ってくるだろうから、すぐに飲めるように珈琲を淹れておこう。今日は外出の予定はないし、溜まっている事務作業をしてもらわないと。