俺様副社長は愛しの秘書を独占したい

 ミーティングが終了し、副社長室に向かう準備をしていると、細川さんが周囲に聞こえないよう耳打ちしてきた。

「気をつけたほうがいいわよ?」

「えっ?」

 彼女はどこか違う方向を見ていた。その視線を辿ると、話し中の課長と源君に向けられていた。

「なにに気をつけるの?」」

 尋ねると、周囲に人がいないことを確認して囁いた。

「源君よ。……彼のせいでもあるのよ? あなたが避けられている理由」

 源君が原因ってどういうこと?
 ますますわからなくなり、小首を傾げてしまう。

「仕事はデキるくせに、こういうところは鈍いわよね。……みんなのアイドル、源君が妙に木名瀬さんに懐いているでしょ? それを誰もがおもしろく思っていないのよ」

 懐いているって……源君が私に?

 寝耳に水で目を瞬かせてしまう。

 いや、だってどう見た源君が私に懐いているように見られるのだろうか。どう見ても裏があるし、むしろ敵視されているようにも感じるのに。

「けっこうひどく言われていたわよ? 自分の功績を餌にして、源君を誘惑しているとか、お金を貢いで遊んでもらっているとか」

「なによそれ」

 バカバカしい話に頭が痛くなる。