「もう、俊輔さん?」

 息も途切れ途切れに抗議をすると、彼は愉快そうに笑った。

「かわいい瑠璃が悪い。最近、会社でもよく笑うようになっただろ? それは喜ばしいことだが、恋人としてはおもしろくない。……俺だけのものだったのに」

「そ、そんなことを言われても困ります」

 あれほど感情を表に出すのが苦手だった私は、俊輔さんと付き合うようになってから、感情豊かになったらしい。

 専務の秘書についた細川さんにも、よく言われている。「愛嬌があるところが、唯一あなたに勝てていたところなのに、どうしてよく笑うようになったの? これまでみたいにツンツンしていなさいよ」なんて、とんでもないことを。

 自覚はないんだけれど、うまく表に出すことができるようになったのは、間違いなく俊輔さんのおかげだと思う。
 彼の前だと私は素直な自分でいられるから。自然と会社でもそう振る舞えるようになったのかもしれない。

 なんて分析している間に、俊輔さんの長い指が一番敏感なところに触れた。

「あっ……! ほ、本当に俊輔さんこれ以上はダメです。圭太君が起きてくるから」

「どうして? こんなに俺のことを受け入れる準備はできているのに」

「そういうことを言わないでください!」

 恥ずかしいことを言われすぐさま抗議をすると、やっぱり彼は笑う。