頭を下げるものの、混乱したまま。さっきの副社長の話しからすると、彼が東雲社長を呼んだということ?

「あとは私に任せてくれ」

 そう言うと東雲社長は社長と対峙した。

「あ……ご無沙汰しております」

 我に返った社長は慌てて立ち上がり、東雲社長の前に回り込む。私は副社長に「こっち」と導かれて会議室の端に寄った。

「ここでおとなしく待ってて。……きっとすぐに片が付くと思うけど」

「え、あっ……!」

 東雲社長のもとへ戻る副社長。異様な空気が流れる中、私はただ様子を見守ることしかできない。
 静かな会議室内で、社長はぎこちない笑顔で口を開いた。

「本日はどのようなご用件でいらしたのでしょうか? 日本にいらっしゃるなら一言お声かけいただければ……」

「悪いね、知らせずに。……だが、知らせてしまえばキミは慌てて尻尾を巻くだろ?」

「……えっと、おっしゃっている意味がわからないのですが……」

 明らかに動揺する社長に、東雲社長は畳み掛けていく。

「意味がわからない? 本当に? 私が帰国した意味を、キミが誰よりも理解していると思うのだが……」

 意味ありげに言うと、東雲社長は副社長を見た。