『好きな人と居ると、緊張するのは分かるよ。』


「そんな風には見えないよ。」


意外だ。彼はなんでもスマートにこなしていそうに見える。


『そんな事無いよ。でも、友達にしろ恋人にしろ、そのままのあんたを好きだ、って言ってくれる人が居ると思うし、そういう人を大切にすれば良いと俺は思う。』

「人に嫌われるの、怖いよ。」


…嫌われるのが怖い。
嫌われたくなくて人に合わせてばかりいる人生だ。

『じゃあ、少なくとも俺は嫌いにならないから。』


「え…?」


今、心臓が“きゅん”って言った気がした。


『だから、自分らしくいなよ。』


彼は遠くの方を見つめながら、決して大きな声ではないけれど凛とした声でそう言ってくれた。


その声に惹きつけられて思わず隣の彼を見ると、更にその横顔にも魅せられてしまった。


薄い唇にシュッとした鼻筋、切れ長の目。


黒髪、さらっさら…。



初めて会った人に言われた言葉なのに不思議とスッと心に入っていく気がする。