" 気になる人 "
…まじかよ。そう思いながらも浮かんだのは茉由さんだった。
茉由さんがいる場所に向かって走っていくと、すぐ近くに朝比奈さんと新木さんがいて、朝比奈さんとバシッと目が合った。
いろんな意味で気にはなるから朝比奈さんでもよかったのかも、と一瞬思ったけれど、
「茉由さん。」
と自分の口が言っていた。
「来てください。」
といい、茉由さんの手を掴んで走り出す瞬間、少しだけ朝比奈さんの顔が視界に入った。
彼女は酷く泣きそうな顔をしていて、ギュッと心臓を掴まれたかのような苦しい気持ちになった。
それでも走りきり、お題を確認してもらってゴールが認められると、茉由さんは少し顔を赤らめているみたいでこっちまで照れる。
流石に気になっている人として連れてこられたらそうなるよな、てかここまで来たら気持ち伝えなきゃじゃん、なんて少し焦った気持ちにもなった。
それぞれの場所に帰っていいよと係の人に言われて茉由さんと一緒に帰り出した時、向こうから凄い勢いで朝比奈さんが走ってくるのが見えた。
いつもと違う雰囲気に気づく。
すれ違いざまの彼女の顔は、苦しそうで、頬に流れる間も無く地面に落ちるそれが涙と分かるのにそう時間はかからなかった。
なんでそんな苦しい顔をしてるの、と朝比奈さんを追いかけようと足を踏み出したその時、パシッと腕を掴まれる。
