「あたし、バカだ。佐藤くんが先輩のこと特別に思ってるなんて前から分かってたことだったのに。」
佐藤くんの澄んだ瞳はあたしを映してはいなかった。
最初から。
「なんで分かってたのに、少しは近づけたなんて調子に乗ってたんだろう。」
分かってたはずなのに、キツイなぁ。
「あたしなんかじゃあんな美人な先輩に敵いっこなかったのに自惚れて…」
『陽、もうやめてそんな風に自分のこと卑下するの。』
「だって…だってさ!!」
涙がそこまで出かけていて、思わず校舎の方に駆け出す。
『陽!!!!!』
駆け出した瞬間、ブワァッと涙腺が崩壊して涙が頬を伝うこともせずに地面に落ちて行く。
運が悪いことに競技が終わって戻ってきている佐藤くんと先輩にすれ違ってしまい、目が合う。
あたしと目が合った佐藤くんは、目を見開いているように見えた。あたしの不細工な泣き顔を見られたのかも。
いつも会わないのになんでこんな時だけ目が合っちゃうの!と心の中で一瞬文句を垂れたけど、今はそんなのどうでもいい。
