『蒼はね、朝比奈ちゃんが部活見学に来てる時、高確率でトスが乱れるんだよね。俺は何回も蒼のトスを打ってきてるから分かるの。』


「そ、そんなのあたしにわかるわけないよ…!しかも、それがなんだっていうの?」


「ご、ごめ…つい…。」


言い方が思わずキツくなってしまったのに気づいて反省する。


『トスが乱れるってことはさ、心がざわざわしてるってことなんだよ。』


「心がざわざわ…?」


『朝比奈ちゃん、さすがにここまで言ったら察してよ〜。』


「ごめんごめん。あたしまだ全然バレーのことわかんなくてさ…」


『いや、そういうことではなくてさ…。蒼は朝比奈ちゃんが来たら、平常心ではいられなくなるってこと。』


平常心ではいられなくなる…?


『えっ、マジで?にぶちんじゃん。朝比奈ちゃんに心を揺さぶられてるってこと!好きな人の前で緊張しちゃう!みたいな!』


えええっ。


「信じられないよ。だってずっとクールな感じでプレーしてたもん。」


『あいつ不器用なくせにカッコつけたがりなの。そもそも男ってそんなもんだし、いちいちアタフタしてたらカッコわりーじゃん。』


「でも、あたしが来た時だけってなんでわかるの?他にもいっぱい女の子来てるし、あたし3.4回しか行ったことないよ。」