「困るよ〜!親戚の人の目もあるんだし〜」

「あんたたち、何をしたかわかってるでしょ!?とにかく私は結婚式には出ないし、もう日本には帰らないから!!」

怒りに任せて花音は電話を切る。怒りから呼吸が荒くなっていた。

日本にいた頃、花音は智紀と付き合っていた。しかし、うららが智紀を横取りしたのだ。両親は幼い頃からうららを贔屓していたため、「譲ってあげなさい、お姉ちゃんなんだから」の一点張り。全てに失望していた頃、花音はハンガリーへの転勤が決まったのだ。

大好きな可愛いものに囲まれ、可愛い服を着て、異国の地で友達と街を歩く。やっと花音の心が落ち着き、幸せになったのだ。

「絶対に帰らない!」

花音はひとり言を呟き、仕事へと向かった。



花音の働いている会社では、日本人で働いているのは花音だけだ。ハンガリー語があちこちから飛び交う。

花音はひたすらパソコンのキーボードを叩き、仕事をしていた。ハンガリーに来た頃から日本での出来事を忘れるために仕事ばかりしていた。そのおかげで仕事をきっちりこなせるため、上司からの信頼は厚い。