無邪気な彼女の恋模様

「いや、俺は怒ってる。」

「えー。」

とか言いながら、波多野さんの口調は怒っていない。
私は様子を伺いつつも、どうしようかと頭を悩ませた。
が、

「俺がどれだけ花緒のことを大切に思っているか分からせてやる。」

「えっ、えっ、そんなこと言ったら、私の方が大切に思ってるもん。負けないもん。波多野さんが側にいないと寂しくて死んじゃうもん。ばかー!うわーん!」

言いながら無性に泣けてきて、私はまた声を上げて泣いた。
だって波多野さんは変わらず優しいのに、私は勘違いでいろいろ悩んで別れようとして、すぐに振り回されちゃう自分に嫌気が差すよ。
こんなにこんなに好きだし、波多野さんだって私のことを大切にしてくれているというのに。

ぐしゅぐしゅ涙を拭っていると、ふいに波多野さんに左手を取られた。
なに?と思う間に、指にするりとはまるリング。

「え?」

キラキラとした控えめなデザインの指輪が薬指にはめられていた。

「これ。」

ドキ、ドキと鼓動が早くなるのがわかる。
だってこれ指輪だし、薬指にはめられたし。
これって、これって…。

「こういうのよくわからなくて姉の店で買ったんだけど。」

「お姉さん?」

「姉はジュエリーショップの店員だから相談してた。花緒に内緒で買いたかったし。結果的にサプライズにはならなかったけど。」

波多野さんは照れながらもボソボソと経緯を教えてくれる。
いやいや、これ、サプライズだよ。
どう考えてもサプライズじゃないですか!