無邪気な彼女の恋模様

そんな私にちなみさんは優しい口調で言う。

「やだわー、お邪魔だったかしらね?ごめんなさいね。」

何故か私に対して詫びを入れてくるちなみさん。
な、なぜ?
怒るならわかるけど謝るとか、もう意味がわからない。

「これ、持ってきてあげたから!泣かすんじゃないわよ、バカ悠真!」

小さな紙袋を波多野さんに押し付けると、ちなみさんはじゃあねーと手を振り振り、そそくさと帰っていった。

な、なんだったの?

嵐が去った後のように、私と波多野さんの間には静寂が訪れていた。

元カノさん、帰りましたけど???

ポカンと立ち尽くす私に、波多野さんはばつが悪そうに言う。

「ちなみって、俺の姉。」

「あね?おっ、お姉さん?!」

そんなまさか、波多野さんのお姉さんだったなんて。
どうしよう、ご挨拶どころか泣き腫らした酷い顔を見られてしまった。
なんてことー!

あわあわと頭を抱えていると、上から波多野さんが冷たく言う。

「お前、何と勘違いしてたわけ?」

「…波多野さんの元カノ。」

「はあ?」

「だって木村さんが…。」

「また木村かよ。」

「ち、違う。勝手に木村さんがいろいろ教えてくれただけで、波多野さんの元カノの名前はちなみさんだって。それを私が勝手に勘違いしちゃって。うう。ごめんなさい。」

言い訳を並べてみたけど言えば言うほど私が悪いのがわかって、私はしょんぼりと項垂れた。

元カノじゃなかった。
お姉さんだった。
はぁぁぁ、お姉さんかぁぁぁぁ。