無邪気な彼女の恋模様

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夕食を作っていると波多野さんが帰って来た。

「おかえりなさい。」

いつも通り出迎えるが、波多野さんほ何だか不機嫌な顔をしている。

「花緒、話がある。」

コートとカバンを置いた波多野さんは、いつもとは違うぶっきらぼうに言って私を見る。
その真剣な面持ちに、私は息を飲んだ。
な、何だろう?

「今日、木村に何された?」

ドキリと胸を打つ。
けれど私は平静を装う。

「別になにも?」

「三浦さんから聞いたけど。」

三浦さん、何を言ったんですかー?!
私は動揺しないように、至って普通に、そうフツーな調子で言った。

「お手伝いしただけ。」

「お手伝い?何の?」

「何って、何か製本作業みたいな?」

ちょっと可愛く首を傾げてみたのに、波多野さんは冷たい目をして私を見据えた。

「花緒、隠し事はなしだ。」

咎めるような言い方に、私の頭の中で何かが切れる音がした。
ずっとモヤモヤくすぶっていたものが、一気に溢れ出てくるようだ。

ちなみさんって誰?
ちなみさんって誰?
ちなみさんって誰なのよ!