無邪気な彼女の恋模様

「この辺は治安いいし、住みやすいよねぇ。」

「…そうですねぇ。」

ヤバい、話し始めた。
水戸さんったら、話し始めると長いんだよなぁ。
私は早く帰ってお風呂に入って寝たいのに。
しかもさっきまでタクシーで寝てたせいか、上手く頭が回らない。
どうやって回避しようかと頭を悩ませた。
その間にも水戸さんは一人でしゃべり続けている。

「花緒!」

突然反対方向から腕をぐいっと引っ張られ、私はよろけた。
驚きのあまり声を出せないでいると、私の前にはさっき別れた波多野さんが仏頂面で立っていた。

は、は、は、波多野さんー!
私が口をパクパクする中、波多野さんは不機嫌そうに言う。

「家の鍵、忘れてたぞ。」

「えっ?」

差し出された鍵に驚いて、慌ててカバンの中をごそごそと確認する。
そんな私を、波多野さんは自分の背に追いやった。