無邪気な彼女の恋模様

三浦さんの結婚の話を完全に私が食ってしまったけれど、何故だか大盛り上がりで宴会は終わった。

「当然、百瀬ちゃんを送ってくよな。」

酔っぱらいの柿田さんに肩を組まれて凄まれ、波多野さんは渋い顔をした。
柿田さん、もういいので放っておいてください。
…とは言えずに苦笑いな私。

流れに身を任せて、結局波多野さんと二人タクシーに乗った。
二人きりの空間は何となく気まずい雰囲気で、さっきまでの盛り上がりが嘘だったかのようにしんとしている。
横目でチラリと波多野さんを見ると、それに合わせて波多野さんもこちらを見るので、私は慌てて視線を窓の外に送った。
何だかドキドキが止まらない。
タクシーで流れるラジオが耳をかすめていくけれど、まったく内容が頭に入ってこなかった。


「百瀬、百瀬。」

名前を呼ばれて体がゆらゆらと揺れる。

「ん?」

気付けばいつの間にか眠ってしまったらしい。
波多野さんが私の肩をユサユサと揺さぶって起こしてくれていた。

「あっ。すみません。」

慌てて姿勢を正すと、波多野さんが笑いをこらえている。
え、なぜに?

「顔にシートベルトの跡付いてる。」

クククっと笑う波多野さんに、私は恥ずかしくなって両手で頬を押さえた。
そんな跡が付くほど爆睡していたなんて。
乙女失格じゃーん。

「ここでいいんだろ?」

私の動揺をよそに、波多野さんはいたって普通に聞いてくる。
改めて外の景色を見ると、自分の家の近くであることが確認できた。

「そうです。ここでいいです。」

私が答えると、波多野さんは私のシートベルトを優しく外してくれる。
ちょっと、え、なに、その行動、イケメンなんですけど。
常々不意打ちは卑怯だって言ってるじゃないですか!(私の心の中で)