衣装に着替え、髪をセットしてピンマイクを付ける。観客席からは過去1番の熱気が伝わってきて鳥肌が立った。

今日はついに大千秋楽だ。日本の劇団では初となる全70公演・総観客数15万人のこの公演が今日で終わりと考えるとやはり寂しいと思う。昔は地元だけでやってた小さな劇団が、15年後にはこんなでかい舞台やってるなんてまさにおとぎ話みたいで出来すぎていると誰もが思うだろう。だって俺でさえそう思うもん。でも

「おとぎ話じゃねぇもんな…」

今までやってきた公演を振り返って、現実だということを痛感する。舞台をやる事に浴びてきた、包み込まれるような拍手喝采は今でも一つ一つ思い出すことができるくらい、しっかり脳裏に焼き付いている。中でも1番心に残っているのは、15年前の、LIFE旗揚げ公演。
目を閉じて思い出に浸っていると後ろから声がかけられた。

弘「準備万端か、蓮。」
「リーダー」

俺をもう一度舞台に引き上げてくれた恩人。
俺はあんたに一生ついて行くって決めたんだ。
あの日の、あのカーテンコールから……