桜交じりの風が強く吹きつけ、目を見開いた僕の制服が激しく波打つ。

「あの頃私は勇樹にたくさんのものをもらった……いっぱい教えてもらった……いっぱい一緒に過ごした……そんな相手が『友達』じゃなくてなんなんだって……あの二人も、そう言ってた……」

「ウソだ……ウソだウソだウソだウソだッ!」



パニックに襲われて、僕は叫ぶ。

「そうだ! そうやって綾瀬はまた僕を騙さそうとしているんだ! そうに決まってる! 僕はもう誰も信じない! 僕の隣にはもう誰もいない! これ以上僕から何も奪わないでよ!」



だが、綾瀬の頬を伝う涙を見て僕は言葉を失う。

なぜなら、その涙は今まで見たどんな涙より美しかったからだ。

そしてきっと、僕はその理由を知っている。

彼女の言葉が真実だからこそ――その涙が美しいのだと。

「信じてもらえなくていい……ただこれだけはどうしても伝えたかった……だからもう想い残すことは一つだけ」



「勇樹が悲しむ顔を見ながら死ぬのは……私も悲しい」