PM・15:00


あれから六時間が経過した。

僕、秋人、綾瀬、神崎さんの四人を残してテロリストたちは生徒を連れ出し、教室のドアにはしっかりと鍵をかけられた。

僕たちは何とか脱出を試みたけど、出口は閉ざされている上に窓も強化ガラス仕様。
どこにも隙は見当たらなかった。

テロリスト側からも何の連絡もないどころか、見張りが立っている気配もない。

もしや教室のどこかに暗号が隠されていて、僕たちが謎を解いていく様を別室で黒幕が見ているのでは――そんな思い付きで教室を漁ってみる。

見つかったのは、ロッカーに詰め込まれていた大量の水と保存食だけだった。……僕たちにこの教室で暮らせとでも言うつもりだろうか。

「ちくしょう! あいつら俺たちを閉じこめて一体何がしたいんだ!」



秋人が乱暴に机を蹴飛ばした。

「気持ちは分かるけど落ち着いて。焦ったら敵の思う壺だ」

「その敵が何も仕掛けて来ないんだよ! ある意味一番焦るだろ!」



確かに、と思ってしまって僕が言葉に迷っていると、神崎さんが助け舟を出してくれた。

「高木君。焦ってもいいことなんて一つもないよ」

「か、神崎さん……」



神崎さんは秋人の手を取り、天使の様に穏やかな声で告げる。

「私はみんなで無事にここを出たいと思ってる。だから助けが来るまでは大人しくして体力を温存しなきゃ。違う?」

「そ、そうですね……男の俺が一番しっかりしなきゃいけないのに、どうかしてた……ごめん」



すっかり大人しくなった秋人に、『秋人君、神崎さんの前じゃすっかり骨抜きだね』などと綾瀬が茶々を入れ、『う、うるさい! お前は黙ってろ!』と秋人が分かりやすく顔を赤くする。

とりあえず秋人が落ち着いて良かった。

救助がやけに遅いのが気になるけど、後数時間も待てば大丈夫だろう。



そう楽観的に考えていた僕は、何か大事なことを忘れている気がした。