ブルブルッ!

突然震え出した僕のスマホに驚き、二人はその場から飛びのいた。

「ご、ごめん! びっくりしちゃって……」

「だ、大丈夫! 私もだから……!」



早鐘の様に脈打つ鼓動を落ち着かせながらそんなやり取りをし、深呼吸をしてからスマホを見る。

こんなタイミングで電話かけてきた野暮な相手は――ケニー先生だった。

僕の脳に一瞬にして周囲の冷えた雪の様な感覚が襲う。

出るべきか迷っていると、奈波が問いかけてきた。

「どうしたの? 電話に出るなら遠慮しなくていいよ」



どうやら僕が迷っている時点で、電話の相手が重要な人物だと感づいたらしい。

「……ケニー先生なんでしょ?」



案の定、言い当ててきた彼女に僕はシニカルな笑みを浮かべる。

「奈波はやっぱり勘が良すぎるよ」

「今回は勘じゃない。勇樹に電話する様な相手なんていないと思ったから」

「正解だけど……今回は勘であって欲しかった……」



僕がわざと落ち込んだ声で言うと、奈波は悪戯っぽく笑った。

「ごめん、一人はいるよね。勇樹に電話が出来て、なんならそれ以上のことも出来る相手が」

「ああ」



僕は奈波なりの励ましに感謝しながら、スマホの応答ボタンを押した。



「僕はもう一人じゃない」