次の日、僕はずっと『ユートピアート』を調べていた。

学校はすでに転校することが決まっている。それまでの間することのない僕にとっては良い暇つぶしだ。

例えそれが『救い』と何の関係があるのか分からなくても。

調べていくうちに分かったことは、これが『活動者特化型』のSNSであるという点だ。

『ユートピアート』内には『ピア』という単位のポイントが存在し、これを換金してお金に変えることが出来る。

ピアを得るには何らかの発信を行い、それを評価してもらう必要がある。

例えばアプリ内に歌を投稿すればその再生数に、小説ならそのPV数に応じてピアが支払われる。

何気ない呟き(これを『ピアートする』というらしい)でも、その『いいね』の数に応じてピアがもらえる……と言った具合だ。

もちろん、ただの呟きよりは楽曲や小説、絵の投稿などといったより創造的で労力のかかるものの方がピアの支払い率は高い。

ただ現状、ユートピアート内には僕(因みにユーザー名はユウキだ)と『N』しかいない為、活動する人もいなければ見てくれる人もいないのでピアはもらえない。

そもそも僕はこんなアプリで小遣い稼ぎをしたいわけじゃない。

死にたいと考えている人間にとって、お金なんかただの紙切れも同然だ。

約束の夜の十時になると、僕は『N』に再び連絡を取り素直に疑問をぶつけた。


『僕にはケニー先生の意図が分かりません。あんなものは僕たちのような人間には縁のない世界ですよ』


しばらく間があった後……『N』から驚きの答えが返ってきた。


『そうでしょうか? 私は少し興味をそそられました』


『えっ?』


『ユートピアート特有のシステムに関してはまだ私もよく分かりません。でも、ケニー先生はきっと私たちにあのアプリを通して何か行動を起こして欲しいのだと思います』


『それならケニー先生が直接指示すればいいじゃないですか』


『きっと自分で考えなきゃダメなんです。ユートピアートは何かを創り出す場所。ケニー先生は私たちをその先駆者にしようとしているのかもしれません』