「やあ雨宮君久しぶり! 今日もよく頑張ってここまで来たね」



病室に入ると、白衣に丸眼鏡姿のやせ細った男が僕を出迎えた。

「ケニー先生……こんばんは」

「そんなに暗い顔をしちゃいけないよ……と言っても、今日は流石に無理か」



今日は、というのは綾瀬と秋人と神崎さんのお葬式のことだろう。

「まあとりあえず座りなよ。今日はいつも君が嫌がるビデオを見せたり面倒な身体検査をしたりなんかしない。少しカウンセリングをするだけだ」



ケニー先生は朗らかに笑って僕に椅子を勧め、丸テーブルの湯飲みにお茶を注いだ。

僕はそれを聞いて少しホッとした。

あのおぞましい映像を延々と見せられたり、長々と脳波をスキャンされたりするのは
もううんざりだからだ。

「早速始めようか。事件そのものについては先週教えてもらったからもう聞かない。ただ事件の後、君の心がどう変わっているのかを知りたいだけなんだ」

「どう変わっているのか……」

「あれは不可抗力の事件だった。君が三人の友人を殺めてしまったことで罪悪感を感じていることも分かっている。でも、本当にそれだけかい?」



ケニー先生がこちらを覗き込む。

「他に思い詰めていることはないかい? 例えば――」

「遠回しな質問をしないで下さい。先週、先生が僕にあんなことを言ったのは、僕に自殺願望があることを分かっていたからでしょう?」



僕は暗い目を上げた。

「先生は僕を救ってあげるとおっしゃった。だったら、今すぐその約束を果たして下さい」



ケニー先生はしばらく僕を見つめていた後、お茶を少し啜った。

「君が死にたいという気持ちは変わらないんだね?」

「ええ。先生が救ってくれないなら僕はもうこの世に未練はありません」

「分かった。……じゃあ手短に始めよう」