「邪魔をするなあああ!」

俺は獣の咆哮を発して秋人に飛び掛かった。

不意を突かれた秋人から椅子を叩き落とし、壁に叩きつける。

秋人は体格は良いけど腕っぷしはそれほど強くない。

対して今の俺は全身に力がみなぎっている。

負ける気がしない、勝って当然の勝負。

いや……いっそのこと殺すことだって――

俺は秋人の喉に手を伸ばして、試しに力を入れてやった。

秋人の目が見開いて、口が魚の様にパクパクと動き出す。こんな面白いものを見たのは初めてだ。

もっと見ていたい。

この俺の邪魔をした報いを、この全身の衝動を全部ぶつけてやりたい――

その時、何かを目元に被せられ俺の視界を塞いだ。

「ぐああああ!」



俺が暴れて強引にそれを振り払うと、千切ったカーテンの切れ端を握りしめて神崎が震えながら立っていた。

「秋人君から……離れて下さい……!」



神崎がか細い声を精いっぱい振り絞る。

秋人は解放されてヒュウヒュウと苦し気に息をしながら喉元を押さえていた。

この様子ではとてもすぐには動けそうにないだろう。

「神崎さんまで俺の邪魔をするんだね」



獲物を神崎に変えた俺は立ち上がると、そう言って彼女に肉薄する。

「俺はお前みたいな女が一番嫌いだ」

「え……?」

「恵まれた容姿をしているのにいつも謙虚に振る舞う。弱者を見つけたら助けずにはいられない。俺が持っていないものを全部持ってやがる。だからお前は嫌いだ」

「何を言っているんですか……? 勇樹君だって見た目は良いですし、ついさっきまではあんなに優しかったのに……!」



だが、困惑する神崎を俺は綾瀬の時の様に容赦なく押し倒す。

「キャッ⁉」

「俺のことを何も知らない癖に偉そうに語るんじゃねえ! 秋人の前にまずはお前からだ! 綾瀬は最後にしてやる。どうせここからは逃げられないんだからな――」



俺は醜悪な笑いと共に、神崎のブレザーに手をかける。

神崎の悲鳴。

秋人の絶叫。

綾瀬の慟哭が教室を埋め尽くして――



その日、僕はかけがえのない三人の友人を三本の十字架に変えてしまった。