次の日、

教室に入ると、月城くんは机にうつ伏せになって朝から既に寝ていた。

バスケ部、朝練でもあったのかな。

私は自分の席に座る。すると、昨日一緒にバスケ部見学に行った友達が私のところにやってきた。

友達は朝からテンション高めで話し始める。そして、バスケ部のカッコいい先輩の話題になった。

熱弁する友達。

私は何となくバスケ部の話を、後ろにいる月城くんに聞かれたくなくて、慌てて話題を変える。

「話・・聞かれたかな。」

私は気になって、窓越しに月城くんの様子を見る。月城くんは寝たままだった。

「良かった。」

安心した私は、また友達と話し始めた。

チャイムが鳴り、みんな席に座る。

プリントが配られ、私も後ろの席の月城くんにプリントを渡す。

「先輩を狙ってんの?」

突然、月城くんが話しかけてきた。

「ふぇっ!?」

私は動揺して思わず変な声が出る。先生がギロッと私を見てきたので、慌てて前を向いた。

「月城くん、さっきの話聞いてたんだ。」

私は憂鬱になった。

何となく月城くんには聞かれたくなかったな・・。

私は授業に集中出来ず、ボーっと外を眺めていた。

「えっ?」

私は気づいてしまった。

外の曇り空を眺めていた私だったが、ふと窓を意識すると、窓越しに月城くんが私を見ている気がする。私は窓越しに月城くんをじぃっと見た。

窓越しに映るお互いを見て、私と月城くんは声を出さずに笑い合う。

授業が終わり、休み時間になった。

私は勇気を出して後ろを振り返り、初めて月城くんに話しかけた。

「初めまして。」

私はニッコリして言った。

「今更『初めまして』ですか?桜井(さくらい) (あや)さん。」

月城くんは私の名前を呼んで、ニヤッとする。私は月城くんが私の名前を覚えてくれていた事が嬉しくて、顔が赤くなった。

「桜井さんさ、よく窓越しにこっちを見てるよね。」

「し、知ってたの?」

月城くん、いつも寝てると思ってたのに・・・いつ気づいたんだろう。

次の授業のチャイムが鳴る。

私は前を向き、授業を受ける。

すると、後ろの席から月城くんが丸めた紙を投げてきた。

「何だろう?」

私は紙を広げた。

『俺もよく窓越しに進藤さんを見てるから。』

私は思わず窓越しに映る月城くんを見る。月城くんも窓越しに映る私を見ていた。