悲劇の始まりは、その男の一言からだった。

「この村には、有名な死神伝説がある」

その日を境に、人々は疑心暗鬼に取り憑かれたのだった……。



とある国の山奥にその村はある。銀の採取により一躍有名になった村だ。

最初は百人にも満たなかったこの村は、ここ数年で人口も増えて五百人近くに増えた。もう町と呼んでもいいかもしれない。

僕はこの村の村長、オースティン・ブラックだ。村長と呼ばれるにはまだ若い年齢だけど、この村は代々僕の家が村長を務めている。村人は不満を言うことなく、僕を支えてくれるんだ。

「オースティンさん、おはようございます」

歌手のニア・マディソンが散歩をしている僕に話しかける。

「おはよう、ニア!ダイアナ!」

ニアの隣には、占い師のダイアナ・エステがいる。二人はいつも一緒にいる仲良しだ。

「……どうも……」

ダイアナはニアや村人には笑顔を見せるけど、僕にはいつも素っ気ない。僕が何かした覚えはないんだけど……。