家に入ってからママは私に何も声をかけなかった
私も何も言えなかった


ママは1人リビングのソファーに座り
ため息をついていた


正直どうして私が悪いの
そんなに悪いことしたのって思ったりもした
でも大人の言うことなんか小さい頃は絶対正義で
自分が自分自身の思いを片っ端から否定した


私は部屋にこもってじっと独りで考えた



あぁ、そうだ笑えばいいんだ
大丈夫だよ私は、ママが笑顔なら私も笑顔なんだよ、ごめんなさいって言えればいいんだよ


私はその日から




『ごめんなさい』と『大丈夫』




これが口癖になった



これは魔法の言葉なんだ
ママを安心させられる魔法の言葉
でも時が経てば経つほど、大人になればなるほど大好きなママが大好きじゃなくなる気がして
怖くなるだけだった


今もずっとママが分からない
私が何を言えばママが傷つくのか
そればかり考えてしまうようになった