彼は精神科にもついてきてくれた。先生から、
「彼は今まで付き合って来た人達とは違うみたいだね。」
と、言われた。

 わたしは彼の家に入り浸っていた。
 狭い3.5畳ほどの部屋は、意外に居心地が良かった。

 始めに関係を持たなかったのが、わたしの決め手だったと話すと、彼は
『オレ、気胸って病気で、手術したばっかで、病院からそういうことはすんなっち言われとったんやん。』みたいなメールを交わしたことがある。

『だから、許可が出るまでできんけど、大丈夫?』
と聞かれたが、
『そっちの方が新鮮でいいよ!』
わたしは即答した。

この頃には、もうすっかり良くなっており、わたしたちは結ばれていた。

8月から、生理が来なくなった。彼に話すと、
「もし出来てたら、お義父さんに挨拶せなやね!」
と明るく言ってくれた。

わたしは、心底彼と付き合って良かった…と思ったものだ。

 9月に入っても生理が来ないので、産婦人科に行った。
 結果は……
「これこれ!このゴミみたいのが赤ちゃんね!」

……ん?………う〜ん………

喜んでいいのか反応に困る。

まぁ、とりあえず2人で顔を見合わせて笑う。

彼は父ちゃんに合うと、「こんにちは」と挨拶をする。
 第一関門突破。父ちゃんは挨拶をしない奴が嫌いだった。

 わたしは父ちゃんに、あらかた内容をメールしておいたので、話は早かった。

 父ちゃんは、コーヒーを片手に話しだす。

「……で?どうするんや?お前たち…。お父さんは、もう堕ろさせんぞ。」
「言われんでも産むし!やけ、話があるっち言ったんやん!」

 すごい剣幕で話すわたしを、父ちゃんは遮る。

「愁の気持ちはわかった。…で、籍入れないかんけど、(まさ)君は今仕事してないけな。仕事はどうするつもりでおるんか?」
「以前勤めていた所が声掛けてくれてるんで、そこで働こうと思ってます。」
「そうか………。」
「なら、結婚に向けて準備せなやなぁ。挨拶とか…いろいろ。」

「式は挙げんき、顔合わせとかも、別によかろ?籍入れる日もまだ決めんでよかろ?なんかあったら連絡するわ!」
「すみません。失礼します。」

「……ん、わかった。」

軽い感じで話は終わる。
「オレ、一発殴られる覚悟で行ったんやけど……。」
「やけ、言ったやん!家の親はちょっとおかしいって。」

 わたしは苦笑しながらそう言うと、彼の車に乗り込んだ。