シャーペンを取り出しては、何かを書こうとする手が震える。

書いては消し、また書いては消す。

この気持ちをどう言葉にして良いのか分からないのだ。



そんなことをしていたら、あっという間に授業の終わりを知らせるチャイムが教室に鳴り響いていて、そして今日の授業も全て終わったことを知らせてくれていた。


結局、目の前に置かれたルーズリーフに書かれた文字たちは、簡単なもので、あんなにも考えていたわりには、わりと簡単なものに仕上がっていた。


その紙を持ちながら、私はチャイムが鳴り響いた後ですら、眠り続けている橋本流奈の前に立つと、彼女の肩を叩き、起こした。


「ん?なに?」

周りの様子を見て、今がどんな状況なのか把握したのであろう。

その言葉だけを残し、さっさと帰ろうとした彼女を呼び止め目の前に紙を差し出した。

「はい!これ後で読んで!」

「え?私に?」


驚いた様子で、私をただ真っすぐ見つめて来る。

なんだか少し見透かされそうになり、恥ずかしくて「後で読んで!私急いで帰らないといけないから」なんて、彼女の手に押し付けてみたりもして。


「あ、ありがとう」

そう少し引きつりながら笑った彼女を見て私は走り去った。