やっと待ち構えていたお昼休憩

長らく退屈だった授業……
あと、3年も続くのかと思うと、肩を落とすばかりだ。


私は重い腰を上げるとメイク直しに一人トイレに向かい、手を洗い顔を上げた瞬間、トイレの鏡に映る自分の顔を見た。


その瞬間時間が止まった


紫の口紅を手に持っている不良女も、鏡に映っていたのだ。


2人は鏡ごしに目が合っている

お互いになぜか視線を絶対外さない

沈黙の時間が過ぎた


向こうが一瞬だけ鏡から目を反らすと、私は鏡越しの不良女をただ見つめて反らさずにいた。


「ねえ!」と、明らかに隣から発されているだろう言葉が聞こえた瞬間「ハックショーーーー」と、我慢していた豪快なくしゃみが出てしまった。


くしゃみで一度目線が外れてしまい、慌てて鏡に視線を戻したが、見事に鼻水が垂れていた。

2人は鏡ごしにまた目が合い

気まずそうに顔を上げると、不良女は「きったな……」と言いながら、口元が緩んでいた。

「ちょっと待ってな」

トイレの個室から、トイレットペーパーを持ってきてくれた

「あ、ありがとう」

自分でも鼻をかみながら笑いがこみ上げてきたが、我慢しながら「タバコの匂い苦手でクシャミ出ちゃうんだ」と、ひそかに漂っていたトイレから匂う正体のことを話し出せば、

「そんな人初めて聞いたわ」と、不良女は更に穏やかな表情になり再び笑っていた。

「私、流奈!地元は高丘っ」

「私は奈月、地元は山野で学区外から来たの」

「なるほど、知らないわけだ……」

そう言葉が返っていて、なんだかどこかホッとした自分がいた。