2時間目が始まってすぐ、とてもいい匂いがクラスに充満し始める。

時計を確認すると、まだ10時前を指している。

そう、早弁というものだ。


その匂いは窓から入ってくる風と共にみんなの元へと親切に届けて、一斉に匂いの元を探し始めた。

この犯人は窓側の一番前の席の男子だった。


先生の手前、一応教科書を立てて弁当を隠しているが、先生にだってこの美味しそうな匂いは必ず届いてるはずだ。


この匂いに釣られて、木本もカバンから弁当箱を出した。

「おれも早弁しちゃおーっと」と言いながら 黒くて大きめの弁当を開いた。

木本の弁当には、美味しそうな唐揚げが入っている。


「美味しそう、あぁ食べたい」思わず本音がポロリ。


横目で羨ましそうに見ながら、隠すこともなく堂々と机の上に置かれている、1リットルのパックジュースをストローで飲み、お腹を満たした。


最近、彼氏の春樹に太ったことを指摘されたばかり。

それをすぐさま思い出すと首を振りながら昼ご飯までなんとか我慢しようと誘惑と戦ってる。


その美味しそうな唐揚げが、視覚に入らぬようそして嗅覚を落ち着かせるために、横の窓を少し開けた。


窓からは入ってくる春の心地よい風を感じた。

それをこのまま感じていたいと思いながら、静かに目を瞑るとそのまま気持ちよさそうに寝てしまった。