「ねーねー彼氏いるの?」
「いるよ!木本は彼女いるの?」
そう、私は中学を卒業してから春休みに出会った男に猛烈なアプローチを受けて、すぐOKを出して付き合い始めていた。
「いる!同じ中学だった子!一緒に同じ高校行きたいってこの高校受験したんだけど彼女は落ちちゃって」
「そっか……残念だったね」
「内田の彼氏は、どこ高?もしやこの高校に?」
木本はニヤニヤしながら次々と質問攻めをし、私の顔を覗き込む。
その憎めなそうな爽やかな笑顔が彼女さんも好きなのかもしれない……と、思わせるような笑顔に私の顔は一瞬だけ赤らむ。
「彼は20歳!社会人よ!私は車持ってる年上の男が好きなの」
「うわーませてて嫌な女ぽい」
「うわー木本て、幼稚な男ぽいわー」
私はアッカンベーをして木本を挑発した。
そう、もう誰でも良かった……
私の心を少しでも埋めてくれる人なら一瞬だけ忘れかけていた陽平の顔が浮かんだが、おもいきり首を振った。
「うっぜぇ~!!」その瞬間、2人で大笑いしてしまう。
「そこの2人っ!!!静かにっ!!!」その先生の言葉で、一瞬でクラスが静かになった
……と思ったのは、木本と私だけで。
クラスの生徒が静かになったのは、ペタペタとスリッパを鳴らしながら、唯一空いていた席にいきなり座り始めた橋本流奈の登校のせいだった。
クラスのざわつきなんて一瞬で消え、先生は彼女に話しかけることもなく、何もなかったかのように、また黒板に英文を書いていく。
ひかりが後ろを振り返り途中でやってきた彼女の教科書やプリントを並べて授業内容の説明している。
当の本人は肘をつきながらひかりの話を聞いてるのか聞いていないのか適当な相槌をうちながら聞き流していた。
すぐさまチャイムがなった。



