「ただいま~」
家に帰り急いで便せんを出せば、私は机に向かい陽平への想いをただただ綴った。
もう二度と渡せない手紙を……。
ひたすら止まらず、それは2枚にわたって書かれた。
そう、この卒業証書と一緒に閉まっておきたい
自分としてのケジメだったのかもしれない。
「できた!!」
陽平との思い出は確かにここにあって、それを残しておきたかった。
帰ってきて雑に机の上に置かれた卒業証書が入っている丸筒、それを開けると手紙をその場所にそっと入れる
「んっ……!?」なんだか丸筒の中からカタカタと音がする。
それを逆さにすると、何かが転がり落ちて行った。
「えっ、なんだ?どこ行った?」
椅子から下りると、四つん這いになって転がり落ちたものを探す。
「え、ベッドの下じゃん、しかも奥だし……」
制服がかけられているハンガーを取ると、それで手の届くところまで寄せた。
ーーーーーーっ!!!
私の手のひらにあるのは1つのボタンだった。
その手は震え、私はそれを力いっぱい握りしめる
それと同時に慟哭が喉を引き裂いた。
「いつの間に……」
学ランのボタン、それが今私の手のひらの中にある。
「どうして……」
身体を震わせながら、それを口元に持っていくと、もう苦しくて悲しくてひたすら涙が溢れ続けた。
「本当にずるいよ」



