「木村 陽平!!」

"あっ…………"

その名前が呼ばれた瞬間、私は下がっていた目線が再び舞台へと向けられていた。

「ようへい……」

その声は私の口から確かに漏れていて、そして目から我慢していたものが溢れだしてきて、それはハンカチで拭わないと、陽平の姿さえも見れないほどだった。

遠かった……

凄くもう遠い存在で、私の傍にいたあの頃の陽平なんかじゃなかった。

いつも隣にいて、優しい眼差しで私を見つめていてくれた陽平はもうどこにもいなくて……

だけど、こんなにも愛おしくてたまらない……


気が付いたら嗚咽がこみ上げてきてきて、最後まで陽平を見届けることはできなかった。


「卒業生退場----っ!!!」


その先生の声と共に、卒業生を送る音楽が体育館いっぱいに響き渡り、再びすすり泣く声が聞こえて来る。


"さよなら……中学生の私……"


私は、ゆっくりと体育館の出口へと歩くとハンカチで涙を拭った。


私の中学3年間はあっという間に幕を閉じたーーーー。