あれから私は高校へ行くための受験という名の旅の始まりの準備をした。

塾だなんて私に似合いそうもないところに通い始めたりもした。

もちろん、ちゃんと通うわけでもなくいつもサボってばかりだったけど、お母さんはいつか行ってくれるだろうと期待を込め毎月、無駄なお金を塾へ振り込んでいた。


そんな母親の行動を知っていながらも何も悪いとも思わなかった自分だが、たまに足を運べば、塾の先生は私のペースに付き合ってくれて、たとえ時間が少し過ぎようとも向き合ってくれた。

そのおかげもあり無事に第一希望のあの学校に合格できた。


そして、私は今ここにいる。


卒業式----。


泣いても笑っても今日でこの学校に来るのは最後だ。

あっという間に卒業証書授与式が始まると、皆、出席番号順に前に向かって並び始める。

一人一人、順番に。

それを噛みしめながら、一歩一歩、舞台へと向かっていく……。


卒業証書を受け取った人達や、これから受け取る人達、在校生や先生、親たち

流れている音楽と共にすすり泣く音さえも聞こえて来る。



「内田 奈月っ!!」

「はいっ!!」


その言葉に、私は舞台に上がると在校生や先生、保護者の方を振り向きお辞儀をする、そして校長先生の目の前にしっかりと立つと深くお辞儀をした。

目の前に差し出された卒業証書を受け取ると、本当に最後なんだなと少しだけ唇が震えた。


舞台から降りるときの私は、少しだけ目から涙が零れ落ちていた。


受け取った卒業証書を膝の上に置くと、再び決められた場所の椅子に腰を下ろし小さくため息を吐きだし舞台を再び見つめる。


そして残されたクラスの子達をただただ見続けていた。