家に着き、部屋に入ると久々に自分の机に向かい座った。

バッグの中から、さっき先生に貰った冊子を取り出し、張り付けられた付箋を一つずつつまんで広げてみれば、

そこには偏差値などや合格率が書かれていて、目を反らしたくなるような内容ばかりだった。

だけど、私が見ている場所はそんな所ではなくて、全ての基準は制服だった。

「無地のスカートは今と変わらないからな~」

「このブレザーだっさ!!」

私は、制服を見ながら、少しだけ希望が見えた気がして楽しくなった。


「ここ可愛いな~」


自分が一目ぼれした制服は当然、私がどうあがいても行けるような高校ではなくて、親切に貼られている最後の付箋をまたつまむ。

選べる高校はわずかだった。


「えっ!!!ここ可愛い~!!」


その中で目に止まったのは開成高校という所だ。


可愛い制服で チェックのスカート


よし!ここにしよう!!高校をその場で選んでは、角を折り曲げた。


さっき、私が高校へ行くよって話した時の母親の笑顔を思い出しては、胸がキュッっとなって自然と笑顔になった。


少し心を弾ませながら、冊子を抱えながら母親の所へ行く。


「ねぇ?ここね、ここがいいな!!」

慌てて、病院へ行く準備をしていることなんて分かっていたけど、私はあの余韻のままどうしても今聞いて欲しかったのだ。

私が忙しそうにしている母親の目の前に冊子を広げると私は笑って見せた。


「え、奈月、そこは遠いわ、近くの学校に行きなさい!」

喜んでくれるかと、期待していたのものが一気に崩れた瞬間でもあり、凄く心が苦しくなっていく。

分かってる、お母さんが近くの高校を勧めて来る訳を。

きっと、お金だ……。

「私、バイトして定期代も自分で払うから」

「無理よ……遠いと毎日通うのに大変なのよ?」

「大丈夫、ちゃんと真面目に最後まで卒業するから!!」


一瞬だけ、私の顔を見つめたかと思えば「高校にちゃんと入学してくれるならもう好きにしなさい」そう言い終えると、母親は妹の所へと向って行った。


私は冊子を強く抱えなおした。