三者面談の帰り、私の前を母親が早足で歩いている

この後、妹の待つ病院へと向かうのだろう。

いつからか、こんな風に母親の背中をじっくり見ることなんてなくて、そして久々にじっくりと見た母親の背中はなんだかとても小さく感じた。

一歩一歩ゆっくりと母親の背中を見ながら歩くと"そうだ、地元から離れよう"私はこの場所から出て知らない土地へ旅に出ようと思った。


今までとは違う景色が見れるかもしれないし

私を変えさせてくれる何かに出会えるかもしれない。

新しい何かもあるかもしれないし
私のこの抱えているものを分け合ってくれる人に出会えるかもしれないと。


考えれば考えるほど、その時こそがチャンスなのかもしれない。


「お母さん、私高校へ行くよ」


そう後ろから囁くと「分かったわっ、そうしなさい!後でまたゆっくり話そう」そう振り向きながら笑ってくれていた。


そして私に歩幅を合わせて歩き始めると、会話なんて全然しなかったけど、なんだか照れ臭かった。


久々に少しだけ見せてくれた母親の笑顔が、私の心に焼き付いた。