16時15分三者面談が始まり、母と先生が挨拶を交わしている。

横には母親が悲しそうな顔をして座っていて、まだ何も話していないのになんで?なんて思ったが、追い打ちをかけるように私が口を開いた。


「私、高校受験しないから、働く!!」

先生が話し始める前に、私は2人の前でそう口を開く。

「何言ってるの?高校だけはいきなさい!」


母親と私の間に入り慌てている担任の先生は、あながち嫌いでもない。

ただ、先生がどう言いくるめて来ようが今の私には高校へ行く意味が見いだせなかった。

「行ったって勉強しないから行かなくていいじゃん!お金の無駄だよ」

お母さんは深いため息をついて、すこし震えているように見えた。

だけど、そんな姿さえ今の私にはちっとも響かない。


「もう、なんでなのよ……あんたは」

教室の中はシーンとして無言が続いていた。

なんで?理由をここで話せばいい?

全てを吐き出したら、理解をしてくれるの?

そう思いながら、母親を覗き込んだが、うつむいたまま顔を上げずにいた。

「まぁまぁ、内田?勉強だけじゃないし高校で新しい友達が出来る楽しみもあるよ?」

担任は一生懸命私をなだめると、どうにかしてでも高校だけはと必死に言いくるめようとしている、その姿に母親も何度も何度も頷いている。


「例えばこことか、こことか……」

担任の机の上に置かれていたパンフレットを私の目の前に差し出すと、それをめくり出す。

色々な行事があることや、修学旅行の話「おまけだぞ!」なんて聞きたくもない担任の高校での恋愛話まで……

一生懸命、母親と私を交互に見ながら、説明している。

そんな担任に見かねて私は冊子を手に取りめくり出すと、私の偏差値でいけるものを付箋してくれた。

「まだ諦めないで!いける高校あるから!!内田なら大丈夫」

担任の根拠のない大丈夫が、なんだか今の私を少しだけ救ってくれた気がして、少しだけ、ほんの少しだけ自分に穏やかになれた。


「分かった、それ貰っていい?考えてみるよ」

その言葉に、隣に座っていた母親も安緒の表情を見せた。