「あのさ、距離を置きたいんだ」


誰もいない放課後の教室に、親友と思っていた彼女、美香を呼び出していた。

美香とは入学してすぐ一年生の頃から仲良くなった。

同じクラスになって初めて声をかけてくれたのが彼女で、すごく私を好いてくれて、どんな時にも傍にいて、いつも一緒にいた。

中2になって、また同じクラスになった時、飛び跳ねて喜んでくれて「奈月は親友だよ」って私からどんな時も離れなかった。


私もその美香の気持ちに出来る限り応えたかったし、少し執着心が強かったけど、それは気にしないようにしていたつもり。

でも気が付くと美香がいつも傍にいた。


だけど、それが不信感に変わりつつあったのは、私がだんだん他の学校の先輩や友達とつるむようになってからだ。


常に監視されている気がして

自分が知らないことを根掘り葉掘り聞いてくるようになり、次第に私も面倒になってきていた。


「えっ?どういう意味?」

「え、どうって少し距離置きたいの」

「え?奈月!急にどうしたの?てか、なんで?」

「もう耐えられない」

「なにが?」

大声を張り合う美香に私は静かに言葉を返す。

喧嘩がしたいわけじゃない

「私を監視して楽しい?他の子と遊びに行くのとか言わないと怒るでしょ?言っても不機嫌になるし、いちいち美香に許可してもらわなくちゃいけないの?」

今まで美香にこうして強く何かを言ってことなんてなかった。
でも、私は止まらない。

「他の人と遊んで欲しくなかった」


「私のカバンを勝手に開けて、他の友達がくれた手紙を美香が見てたって聞いたんだけど本当?」


美香は私から目線をそらした、それでも私は美香をただ見つめていた。


「ごめん。奈月の事全部知りたかった」

「私は嫌だった。ちょっと離れたいんだよね」

「え?!なんで!いやだ!縛るような事もうしないから」美香は私の手を握り目に涙を浮かべた。


その美香の涙を見て何とも思わなくなってしまった自分にもびっくりしながら肩を落とした。