「おはよ、ねぇ奈月~どうして昨日電話出てくれなかったの?」

「あ、寝てたんだ」

「え?ずっと?何度もかけたのに……」


あと少しで学校に着くって所で、美香が後ろから追いかけてきて、背後から甲高い声で朝から頭を抱えさせてくれるような、美香の質問攻めが続く。

「なんか最近、奈月付き合い悪いよね」

横から、トーンの変化をなくした声で囁く美香の言葉に私は足を止めた。

いっそのこと『ほっといてよ!!』と言いたくなったが、それも面倒なことになると咄嗟に思い、

「忙しくて」とだけ静かな声で吐き捨てると、美香より速足で歩いていく。


人のことを考えている余裕なんてないし

美香に相談したって同情なんてごめんだし、私はもう自分のことだけで目一杯だった。

下駄箱まで着いた時、横に美香がいないことに気付いて、私はそのまま先に教室へと向かった。


席に着くなり、机の上に顔を伏せる。
中3になり、美香とクラスが離れたことが今日ほど良かったと思ったことはなかった。


横に顔を向ければ、今日もいい天気になるだろうと思わせるほど太陽が顔を出し始めていて、

だけどグランドに立ち並ぶ木々の葉が色をなくし始めなんだかとてつもない寂しさを感じた。