妹の亜紀が入院した頃、短い夏も終わり、新学期が始まりだしていて夜遊びも減っていた頃だった。

だけど亜紀の入院により、我が家は一変してしまった。

亜紀のせいではない

そんなの分かっているけど、少しずつ家族の歯車がずれていった。

母親は毎日、亜紀の病院へ面会に行くそして帰りは遅い。

そのことで亜紀がこの家に居ないことを痛感していく・・・
家にいても何処か静かで、自分の家にいる感じじゃなくなっている。


家族が1人欠けてしまうこと、それがどんなことなのか、当たり前の日々がどれだけ大切なのかと、それが悲しくて苦しかった。

私と姉のめぐみは交代で夕飯作りの当番を決めていた。

今日は私の番だ。

母親の代わりに料理本を見ながら夕飯を作り、こんな時、母親の凄さを知り、私は母親に冷たく当たっていた日々を深く反省した。


「ただいま」

久々に聞いた父親の声に「おかえり」と小さく呟きながらキッチン回りを拭く。

「奈月か、珍しいな家にいるなんて」

まるで、本当に私を心配しての言葉なのか疑うほど、心がこもっていない気がした。

「このくらいしか私に出来ることないからさ」

「ああ」

「夕飯、後は温めて食べるだけだから、お母さんはさっき帰ってきて今お風呂入ってる」

「……」

毎日酷く疲れている母親が心配だった。

そんな中、父親はなぜか亜紀の面会に行くわけでもなく、帰宅が遅くなって行くばかり。


「なんか最近遅いね」

「ああ」

久々に話す父親との会話は、とってもあっさりしたもので、父親がリビングのダイニングテーブルに腰を下ろすと、それを見た私は大きなため息を吐き捨て、部屋に戻った。