「ただいま」
そう玄関で呟くと、母親が珍しく出迎えた。
私が靴を脱ぎながら無造作に置いた、買って貰った沢山のプレゼントを横目で見ると大きくため息を落とした。
「ちょっと話があるの」
いつになく元気もなくて、その後ろ姿をみれば酷く肩を落としているように見える。
私は玄関に買って貰ったもの全てをそのまま放置して、母親の話しを聞くために素直にリビングに向かった。
ダイニングテーブルに腰掛けた母親の横に立っているとお互い無言の時間が過ぎていく……
「話しって………」
その瞬間、顔を上げた母の目には涙が溜まっていた。
久しく母親の悲しい顔なんて見てなくて、最近はいつも私に見せる顔は血相を変えた顔ばかりで、思わず息を呑んでことの重大さを悟った。
「えっ………?」
「だから、亜紀が入院したのよ……」
その瞬間、どうして?だとか、なんで?なんてとてもじゃないけど聞けないような雰囲気がリビングに漂っていて、
でも1つだけ言えることは、とても妹が悪い病気にでもかかってしまったのだろうと言うことだけは母親の顔色を見て悟った。
妹の病名
私は聞いたことはなかった。
ただ、色々な検査の結果生存率が極めて低いこと、そして長期入院になること。
それだけを告げられた。
泣きながら嗚咽を漏らしている母に、私はかける言葉なんてなかった。
妹の亜紀が……
昨日までここで一緒に生活していたのに……
まだ5年しか生きていないのに……
私はそのまま呆然と立ち尽くしたまま気が付けば「もう遅いから早く寝なさい」それだけを告げられて私はリビングを出て玄関に向かうと、
そこに並べられていたプレゼントを見るなり、大きくため息をはいた。



