「ねぇ、ねぇってば、奈月……?」
気が付けば、目の前に美香がいて、なんだか少し不貞腐れている顔をしてる。
「え?どしたの……?」
机に伏せていた顔を上げれば、目の前の美香が「気づかなすぎ」なんて険しい顔をして……。
「ああ、ごめん……昨日撮りためておいたドラマに夢中になって寝不足でさ」
そう言いながら、パチンと両手を合わせて頭を下げると美香は大きなため息を吐き出し「許す!!」と笑顔を見せた。
あんなに豹変した陽平のことを考えていたなんて死んでも言えないって思ったし、あんなに豹変させてしまったのが私のせいだなんてことも言えない。
なんにせよ、私の脳内は今日は上手く回ってはくれなくて、気が付けば美香に腕を引っ張られて、クラスを飛び出していた。
「あ……キャンプの……」
美香が足を止めた場所……
そこには、壁一面に写真が貼りだされていて、私はそれがなんの写真なのかがすぐに分かった。
「やっぱり聞いてなかったか、先生が今日貼りだされているからってお昼前に言ってたでしょ?」
「え、聞いてなかった」
「だろうね、お昼前に一緒に見に行こうねって言ったのに……」なんて言いながら、紙と鉛筆を持って一生懸命自分の写真を探す美香……。
その姿を見ながら、私も深呼吸しながら写真を端の方から見ていく……。
6月のキャンプ。
あれからまだ、そんなに経っていないのに……
笑顔で写し出されている自分の写真を見て、その笑顔の自分が懐かしくそして羨ましく思ってしまう。
「ねぇ、奈月ぃ~これ見て~!!良く写ってる~買お~っと!!」
美香の指さしている一枚の写真を目の前に私の足が止まった。
"あっ……"
美香と、私、陽平の3人でピースしている写真
そこには最高の笑顔の私たちがいた。



