「おい、なんだ木村その格好は……」

「うるせぇよ……」


その陽平の言葉に、少しだけクラスがざわつき始める。

その瞬間、国語担当でクラスに来ていた先生は、テレビの横に立てかけてある電話をとると、それを職員室に繋げた。


「はい、そうなんですお願いします」


その言葉に陽平は舌打ちをすると、雑にカバンを机の上に叩きつけた。


「木村っ、なんだお前どうした!!」


すぐさま担任の先生が来て慌てふためいている。


「なんだって、なんだよ……」

担任の先生とは凄く仲が良かった陽平は、騒ぐこともなく、冷静に答えている。

「木村!ちょっと来い!!」

陽平は、腕を掴まれると、それを振り払い「わ~かったから」と椅子から立ち上がり、担任の先生の後へと続いた。


その日陽平は、担任に連れていかれたまま教室に戻って来ることはなかった。


私は下を向いたままだった。


陽平の姿を、顔を見ることはできなかった。


もう、私たちは戻れないところまで行ってしまったんだ。


そして、陽平をあんな風に変えてしまったのは紛れもなく私で、酷く心が痛み今すぐにでもここから飛び出して帰りたいくらいだった。


担任と陽平が居なくなったクラスは、一瞬でざわつき始め「お前ら、静かにしろー!!!」と叫び、

それを一生懸命阻止している国語の先生を見ながら当惑が心の中にあった。