"陽平が学校に来るらしい"
そんな噂が、クラス中に広まったのは、あの電話から2ヶ月くらいが経ち、もう少しで夏休みが終わり体育祭が近づいてきた頃だった。
クラスのみんながざわめき始め、それは学年までも広がった。
人気者の陽平が突然学校に来なくなったのだから、騒ぐのもわけないだろう
そんな人気者が学校に来なくなったのは私のせいなんだとは、当然言えるはずもなく、凄く心が痛む。
でもやっと会えると何処かでドキドキしている自分がいる。
ガラガラーーーー!!!
それは、もう少しで2時間目が始まりそうになっていた時のことだった。
後ろのドアが開いたと思えば、みんな一斉にそっちを向き息をのんだ。
そう、あのクラスの人気者の陽平に誰も話しかけることをしない
「ようへい……」
小さく呟いた言葉は当然、届くわけでもなく、
踏みつぶされた上履きでカツカツと音を立てて横を素通りしては、私に一度も見向きもしないまま視界にすら入れないように席に着いた。
金色に染まった髪……
片方の耳にはシルバーのピアスを2連して、眉毛は細く反られていている。
あの優しい目をしている陽平なんて何処にもいなくて鋭い目つきで、それは威嚇しているかのような……
そこに私の知っている陽平なんていなかった。



