「は?なんで?意味わからねーよ!」

私は徐々に陽平から距離を置いていた。

初めは、親に陽平とのことがバレそうだと嘘をついて、会わないようにして。

もちろん学校でも、放課後も……。


私は陽平を避け続けた。


陽平に私の体を触れさせるたびに、思い出しちゃいけない過去が蘇ってしまい胸が痛む。



自分が成長していくうちに昔の傷の深さに気づいてしまったんだ。



「だから、もう陽平への気持ちが冷めたの、しょうがないじゃん」

「おい!お前本気で言ってんの?納得するように説明しろよ!」


陽平の酷く怒っているだろう顔が想像つかない。

それほどに陽平はきっと私に怒りをぶつけたことなんてなかったのだろう。


私は本当に陽平に大切にされていた。

もうそれだけで十分だと……。


「だからもう無理なんだ……」


胸が苦しくて、溢れ出す涙に気づかれないよう

私は震える唇を噛みしめて、ゆっくりとそう告げる。


「なんなんだよ!いきなり!こっちが無理だっつーの」

くしゃくしゃに頭をかいてる姿さえも想像がついてしまう。


「………ごめん。それだけだから、じゃあね」

「おい!お前この電話切れるのかよ!切ったら……終わりだぞ……」


大好きな優しい陽平の声が聞こえてきたが、その声は今にも消えてしまうな悲しい声だった。

こんなことしたくない。

好きな人をこんなにも傷つけてしまうなんて……。


だけど、こんな醜い心の私は陽平といる資格なんてない。

人を恨み、きっと陽平に想われるほど、自分が壊れていく、それはもう人の心を持ってないただの人形。


私はいつからか、大切な人に嘘をつくことが多くなっていく

切ない苦痛と悲哀に打たれて鼓動が速くなって苦しい


"切りたくない"


そう心で叫びながら、私は指を震わせ“切”のボタンを押した。

その瞬間、今までに感じたことのない苦しみが襲ってきて、慟哭が喉を引き裂いた。


「よう………へ……い」


溢れ出す涙、震える唇、私は息を殺して嗚咽を漏らした……。


一人、真っ暗な部屋の中で、そのまま眠りに落ちていたーーーー。