陽平を好きになってから
時々目覚めた時目から涙が零れていた。
ストーリーせいはいつも違うけど、決まって私は誰かに追いかけられていて、簡単に捕まってしまう。
そして、誰も助けてはくれなくて、暗い部屋に閉じ込められるんだ……。
いつか神さまは救ってくれる……そう願っていた。
だけどいつになっても神さまは何もしてくれなくて、私の体と心の深い傷だけが残されたまま。
夢も現実も同じ……。
うなされるたびに、陽平を強く想うたびに洗面台にあるカミソリを持って左手首に何度もあてた。
死んだら楽になれるのかな……
でもそれを動かすことが出来ずに、その場にしゃがみ込み声を押し殺しこみあげてくる涙を呑み込むかのように唇を震わせ自分の手で口を塞いだ。
誰にも助けてと言えなかった
大切な人に知られたくなかった
誰にも傷ついて欲しくなかった
だから黙ってようと秘密にしようと誓ったのに
やっぱり辛い
神さま助けてください
沢山泣いたら
たくさん寝たら、嫌な記憶がなくなりますか?
私の全てを知っても
友達でいてくれる人
好きでいてくれる人はいますか?
陽平を好きになったことで、鮮明に蘇ってきた記憶。
そうだ私はきっと魂を入れて貰っただけの人形なんだ……
洗面台に手をつきゆっくり立ち上がると、カミソリを元の場所に戻し鏡に映し出されている自分の醜い顔に、微笑んだ。



