誰にも言わなければあの出来事は全て悪夢だったと片付けられる。


口にしなければ、きっと全てが夢だったのだと、私はそう長い夢から覚めているのだから……。

いつか、そうしている間に記憶から消えるはず。



私は自分のベッドの上で目をつぶり、何度も呪文のように唱え、陽平と今日、肌を触れ合って、キスを交わしたことだけを思い出そうとする。


必死に……何度も。



「やめてーーーーっ!!!」


その瞬間ベッドから飛び起きて座ると頭を抱えた。


私の鼓動がもの凄い速さで動き出す。

陽平といた時とはまた違う、とてつもない速さで、酷く。


次第に呼吸が荒くなってきて、それを落ち着かせるために天を仰いだ。



それなのに、私の脳内は陽平がどんどん消されていく。

「いや……いやーっ!!」


昔、厳重に鍵をかけたはずの記憶


決して蘇ってはいけなかったのに記憶……


私がずっと誰にも言わず秘密にしてきた事


今まで閉じ込めてきた記憶





私の心が殺された日----。