キャンプを終え、私の心に変化があった。
ついこないだまで陽平の友達の聡の事で頭いっぱいだったのに.....。
今は目で追いかけていて、家にいるときも考えてしまうのは陽平のことばかりだった。
聡は違うクラスだから……そう自分に何度も言い聞かせてもみたけど、違う。
私は確実に陽平のことを目で追っている。
気が付くと、自然に……。
それに比例するかのように、夜スケボーをしている時に陽平は友達と一緒に電話を頻繁にしてきたりしていた。
ふざけてその友達と電話を替わりたい放題。
そんな何気ない日常が楽しかった。
その電話をいつからか待っている自分がいた。
"陽平に会いたい……"
学校で顔を見るだけじゃ物足りなくて、
学校外で会える時の陽平とは特別な関係になれた気がして、次第に私は独りベッドでそんなことを考えてばかり。
しかしうちの両親はとても厳しい。
男の子との噂話が耳に入ったら、きっと叱られて外出禁止になってしまうだろう。
だから私は、噂が広まらないよう学校では陽平には近づかなかったし、わざとそっけないふりをしていた。
「なぁ....今日来れないよな?」
その日の陽平は1人で、静かな声でそう受話器の向こうでそう呟いた。
「無理だよ....」
そう言いながらも、前とは違う。
私も会いたい.....。
「そうだよな、分かったよ。無理言ってごめんな、また明日......」
その言葉の返事をする間もなく、プープーという機械音が私を一層悲しくさせる。
暫く、その音を聞きながらも、私は部屋を飛び出した。
「お母さん、買い忘れたもの買いに行ってくるね!!」
キッチンに居るであろうお母さんに向かって叫ぶと、返事を聞く間もないまま玄関を飛び出していた。
私は陽平がいる公園へ向かった。
気づいたら走っている自分がいて、そんな自分もなんだか好きになれた。