パシャパシャパシャ

パパラッチ並みの連写のシャッター音が響き渡る。

「写真撮りすぎ!近づきすぎ!!起きちゃうよ」

「いいだろ、好きにさせろ」

私の周りにくっつきまわりカシャカシャと、高級そうな一丸レフを首から下げ、シャッターボタンは仕切りに押しているつもりだろうけど、

さっきから同じような写真ばかりおさめているのを本人は気づいているのだろうか。


「おじいちゃんだぞ〜〜ぉ~」


ベビーベッドに眠る、赤ちゃんの頬を色黒いゴツゴツした指で、優しく優しくそぉーっと触っていたのはあんなに気性が荒かった私のお父さんだった。


赤ちゃんの写真を撮りながら画面を確認しては、微笑む。

垂れ下がった目尻にそれは何重にもシワができている。
あんなに怖かったお父さんは孫が出来た瞬間別人のように変わっていった。

そんなお父さんを見ながら私の心の中がじんわりと温かくなる。


私には、何もしてくれなかったのに……と、嫉妬するくらい私の娘へ、お父さんにとっては、初孫へ愛情を沢山注いでくれていた。

うちの家族は、私とお父さんの関係がよくなるにつれ、次第に一つにまとまりだした。

妹の亜紀は闘病生活を数年……

入退院を繰り返していたが、主治医がビックリするくらい奇跡的な回復をした。


めぐみも、亜紀とも空白の数年は少しづつ時間を埋めるように、距離が縮まっていった。

普通の家族になるにはまだまだ時間が必要かもしれない。
けど、初めて私はお母さんに感謝された。


「奈月ありがとう。お父さん本当に変わったよ。あなたが地元に帰ってきてくれて、こんな可愛い孫まで……」

お母さんは、亜紀の体調が良くなってた頃から仕事も始めていた。
お母さんは、また優しい表情へと戻っていた。


私は黒い過去でもいいと言ってくれた康平と同棲を経て結婚しそして、女の子を無事に出産した。