オルゴールの底のネジをゆっくりとゆっくりと回す

カチカチという音と共に鼓動も早くなる

静かに開けるとまた心地よい綺麗な音色が流れるーーー


そうこの曲のように私は願い続けていたんだ
ずっと、この曲を聞きながら祈り続けていた


私の小さな希望
それは願うことしかなくて、だけど願う事だけで少しだけ救われた気がしたんだ。


いつか、照らされる道が現れる....。
そう信じていたーーーーー

この生活感がない殺風景のマンションの一室に繰り返し流れるオルゴール音とすすり泣きが響いていた。

先程手にした第2ボタンを再び手にすると、ボタンの裏の陽平のイニシャルを指でゆっくりとなぞる。

「陽平?私はまたアリ地獄に落ちちゃったみたいほんと、バカだよね」

自分の涙はじんわりとあたたかった。


七海と言う名前で生まれ変わって
この大都市の東京歌舞伎町で人生をもう一度やり直したかったのだ。


知らない土地で新しい名前で生きてみたら人生リセット出来ると思ってたけど、安易だった。


逃げていただけだったし、何も変わってないんだ
そして自分は塗り替えられない。


それにどんなに嘆いても過去は変えることは出来ないと知ってしまったんだーーーー