「あの……あの……」
「えっ!?あっ!!びっくりしたっ!!なに?」
人がいい気持ちのいい眠りについていたというのに、耳元で蚊の鳴くような声で囁いてきたのは不気味なものだった。
「あ、起こしたならすみません……あの、着いたから」
遠慮がちにそう話しかけてきたのは、隣の席に座っていた真面目でメガネをかけている男の子だ。
「え?」
「んっ?あ、起こしたんです!」
「あはははっ!!起こしてくれたのに、起こしたならすみませんって面白いね!!」
そう私が答えると、真面目なメガネをかけている男の子は「ですよね」と私に続いて笑った。
「ありがとう」
「いいえ」
「降りよう」
その言葉に、真面目なメガネをかけている男の子が先に立ち上がりバスを降りて行った。
私も立ち上がると大きく伸びをしてバスを降りた。
キャンプ場まで果たして近かったのか遠かったのかさえも分からないけど、バスを降りた瞬間、なんだかウキウキしている自分がいた。
「よ~し、みんな降りたかー?そしたら班で1列で並べ~!!キャンプ場に向かうぞ!!」
遠くの方で、そんな声が聞こえてきて、私は班の子を探し1列へと並んだ。



