ここ(東京)は生きやすかった。

こんな私でも居場所がある

こんな私でも必要としてくれる店があるお客様がいる。

そして沢山の出会いがあり、名前すら忘れてしまうくらいの知り合い程度の人たちも増えていく……

ここにくれば、誰かしらが声をかけてくれるのだ。


適当な人たちと適当に遊ぶ

そんな適当な付き合いの中で危ないスリルもまた私が求めていたのだろう。


次第に、男の人に酷いことを言ったり馬鹿にした態度をとり私はどこかで優越感に浸っていた。

東京で生活していても、復讐心はなくならなかったのだ。
やがてそれは叔父ではない全く関係のない男の人にも向けてしまっているのが自分でも分かり始めていたんだ。


「なぁ、七海なんでだよ。こないだは好きってあれは嘘かよ」

「嘘じゃない!あの時はそう思ってた。けど今は違うわ」

「やっとみつけたと思えば……」

気持ちよく人が再び踊りだしたというのに、今日は本当についていないと心底思うのは気のせいではないらしい。

またしても私の目の前で憎悪に満ちた顔をしている男がいる。

「いっったいーーー!!なにすんのよ!!!」

一瞬で左腕に痛みが走ったかと思えば、男に力強く掴まれていてそのまま外へと向かっている。

「ちょっ、はなしてよ!!!」

そんな声などもちろん届かなくて、男の足は速さを増す。

引っ張れながらも"名前、なんだっけな……"なんて冷静に思ってしまった自分にさすがに引いてしまっていた。

無理やり外に出されると、やっと腕の痛みから解放され、今度はジンジンと熱くなっていくのを感じた。

「座れば?」

そう言いながら、目の前でしゃがみだした男はジッポを取り出すとタバコを咥え火をつける。

そして大きな煙と共に「鬼みたいに冷たいやつだな....」そう言いながらジッポを分解し始めていた。